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「自由な建築家に」建築家兼起業家を目指すT.Tです。

過去の見積データから、概算費用を出せないか検証しています。

見積の作成って、結構時間がかかるものだよね。

AIを使えば、その部分も早くなるのかな。
と気になっている方に
病院や学校を多く手がける組織設計事務所で働く一級建築士の私が
過去の見積データから概算費用を出す取り組みについて、実際に検証した内容を紹介します。
これまでの記事では、測量データの自動処理や、BIMとAIの連携について取り組みを紹介してきました。
今回は少し視点を変えて、積算・見積の分野でAIを活用できないか検証した内容をお伝えします。
案件名や具体的な金額には触れられませんが、検証で分かった精度の感覚や、つまずいた点は参考にしていただけると思います。
次のいずれかに当てはまる方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 見積・積算にかかる時間を減らしたい人
- AIで概算費用を出す精度がどの程度か知りたい人
- 設計事務所での地道な検証プロセスに関心がある人
- 過去の見積データを使う検証を始めた理由
- 実際に試してみて分かった精度の感覚
- 今つまずいている壁と、今後の展望
地道な検証の記録として、参考にしていただければと思います。
それでは、順に見ていきます。今回は下記の順に整理しました。
- なぜこの検証を始めたか
- 実際に試したこと
- 検証で見えてきたこと
- 壁と今後
なぜこの検証を始めたか
設計の初期段階では、概算費用の見通しが早く欲しい場面が多くあります。
施主との打ち合わせでも、規模や仕様を検討する前提として、費用感が求められます。
ところが、精度のある概算を出すには、それなりの積み上げ作業が必要です。
そこで目をつけたのが、事務所に蓄積されている過去の見積データでした。
用途や規模が近い案件のデータには、共通する傾向が眠っているのではと考えました。
この傾向をAIに拾わせれば、初期段階の概算をもう少し早く出せるはずだと考えました。
もちろん、案件ごとに条件は大きく異なります。
敷地の条件や設備の水準が違えば、当然、費用も変わります。
ただ、精緻な金額を出すことよりも、判断材料としての目安が欲しいというのが出発点でした。
その目安を、過去のデータから機械的に導けないかというのが、今回の検証の狙いです。
積算・見積は、意匠設計とは別の専門性が求められる領域です。
だからこそ、内訳書の構成や科目立てを理解する手前の段階から、AIと一緒に整理していく必要がありました。
実際に試したこと
最初に取り組んだのは、過去の見積データを整理する作業です。
実際の金額は伏せますが、複数の案件のデータを横断的に扱えるように準備しました。
用途や延床面積、構造といった条件をそろえ、比較できる形に整えていきました。
その上で、条件が近い案件同士をAIに拾い出させ、傾向を数値として整理させました。
ここまでの準備だけでも、思っていた以上に手間がかかりました。
案件ごとに内訳書の書式や科目の立て方が微妙に違っていたためです。
同じ科目でも、案件によって名称や範囲の切り方が異なっていました。
この違いをそろえないまま比較すると、傾向そのものが歪んでしまいます。
そのため、科目の対応関係を一つずつ確認しながら、下ごしらえを進めました。
地味な作業ですが、ここを丁寧にやらないと、あとの結果が信用できなくなります。
整理が終わったあとは、用途や規模が近い案件をいくつかのグループに分ける作業に移りました。
グループごとに費用の傾向を数値で確認し、外れ値になっている案件がないかも合わせて見ていきました。
外れ値の案件は、あとで理由を確認すると、敷地条件や設備仕様に特殊な事情があるものがほとんどでした。
質問: 過去の見積データを整理する中で、特に大変だったことはありますか。
T.T: 案件ごとに内訳書の書式や科目の立て方が違っていたため、そろえる作業に一番時間がかかりました。ここが検証全体の下ごしらえでした。
検証で見えてきたこと
実際にAIが出した概算費用は、案件によって精度にばらつきがありました。
用途や規模が近い、典型的な条件の案件では、実感に近い数値が出ることもありました。
一方で、敷地条件や設備仕様が特殊な案件では、数値が大きくずれる場面もありました。
過去のデータに似た事例が少ない案件ほど、AIの推定は当てにしにくいという印象です。
これは、AIが持っているデータの範囲でしか、傾向を拾えないためだと理解しています。
つまり、概算費用は判断材料の一つとして扱うのが実務での落としどころだと感じています。
数値だけを見て安心するのではなく、その根拠となる条件まで確認する姿勢が欠かせません。
幸い、精度がずれやすい案件の傾向には、比較的早い段階で気づくことができました。
普段から複数の方法で答え合わせをする習慣が、ここでも役に立ったと感じています。
また、概算の数値そのものより、その内訳の配分を見る方が参考になる場面が多いと分かってきました。
総額が多少ずれていても、科目ごとの比率は、用途が近い案件同士でおおむね似た傾向を示していました。
質問: AIが出した概算の数値を、実務ではどのように使っていますか。
T.T: そのままでは使っていません。あくまで初期段階の目安として見て、最終的な数値は自分で積算し直しています。
壁と今後
今つまずいているのは、条件が特殊な案件をどう扱うかという点です。
案件の個別性が強くなるほど、過去データからの類推が難しくなっていきます。
この壁をどう乗り越えるかは、まだ検討している段階です。
条件を絞り込んだ上で類似案件を探す方法や、精度の目安を数値で示す方法を試していきたいと考えています。
具体的な内容はまだ固まっていないため、実務にそのまま使えるところまでは進んでいません。
並行して、内訳書の科目立てそのものを見直し、案件をまたいで比較しやすい形に整える案も検討しています。
ただ、こちらは社内の運用に関わる話でもあり、まだ実行には移せていません。
進捗があれば、この日記シリーズで改めて紹介するつもりです。
まとめ
今回は過去の見積データから概算費用を出す取り組みについて解説しました。
実際に試してみると、精度が出やすい案件と、出にくい案件の両方があることが分かりました。
もっともらしく見える数値も、根拠となる条件まで確認するまでは信用しきれないと感じています。
それでも、判断材料の一つとして使える範囲は、少しずつ見えてきた実感があります。
大きな仕組みを一気に作るより、地道な検証を積み重ねる方が、結局は確実だと感じています。
積算・見積の分野は、私自身まだ経験が浅い領域でもあります。
だからこそ、内訳書の構成を一から理解しながら検証を進める必要があり、時間はかかりました。
それでも、この分野にAIをどう関わらせられるかを考える過程そのものに、手応えを感じています。
日常業務でのAI活用について、全体像を知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。
BIMとAIの連携についての検証記録は、こちらの記事にまとめています。
この日記シリーズでは、今後も進捗があったタイミングで、素直な感想を書いていくつもりです。
今回の記事は以上です。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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