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「自由な建築家に」建築家兼起業家を目指すT.Tです。

中庭のある家に憧れているけれど、後悔しないだろうか。

いいことばかり書いてある記事しか出てこないなぁ。
とこれから家を建てる皆さんに
事務所や学校を手がける設計事務所で働く一級建築士の私が
中庭のある家のデメリット7つを、設計者の視点から解説します。
あまり語られませんが、中庭で問題になるのはいつも「水」と「お金」です。
次のいずれかに当てはまる方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 中庭のある家を建てたいと考えている方
- 中庭で後悔した話を先に知っておきたい方
- 住宅の設計を勉強している学生の方
- 中庭のある家のデメリット7つ
- 設計者が中庭でつまずいているポイント
- 中庭をやる前に確認しておくこと
中庭のデメリットを先に知っておくことが、中庭をやるかどうかの判断材料になるはずです。
前回は、中庭のメリットを断面図から7つ紹介しています。あわせてご覧いただくと、判断がしやすくなると思います。
それでは、順に見ていきます。中庭のある家のデメリットは、次のとおりです。
- 中庭は外壁を増やす
- 中庭は防水と樋を増やす
- 中庭は水の逃げ場を失う
- 中庭は近すぎると暗くなる
- 中庭は熱を逃がす
- 中庭は動線を伸ばす
- 中庭は音と視線を回す
- 番外編→中庭は手入れを要求する
中庭は住宅の手法として、とても有効です。それは前回の記事で書きました。
ただ、そう言えるのはうまく成立させた中庭だけです。
私は実務で中庭のある計画を何度も描いてきましたが、うまくいかない中庭には、だいたい同じ理由がありました。
その理由を先に知っておくだけで、後悔はかなり減ります。
いくらかかるのか<コスト>外壁,防水,樋
1:中庭は外壁を増やす
中庭のある家で最初に効いてくるのは、実は外壁の量です。
言葉だと伝わりにくいので、単純な形で計算してみます。
10m×10mの正方形の平屋を考えます。床面積は100㎡、外壁の長さは外周だけなので40mです。
この真ん中を4m×4mだけ抜いて、ロの字の中庭にしてみます。
すると床面積は84㎡に減るのに、外壁は外周40mに中庭側の16mが足されて56mになります。
床は16%減って、外壁は40%増える。
中庭の正体はこれです。外壁材、下地、断熱材、サッシ、足場。すべてこの56mに掛かってきます。
「坪単価いくら」で考えていると、この増分がまるごと抜け落ちてしまうのです。
中庭をやるなら、外壁の増分を最初の予算に入れてください。
2:中庭は防水と樋を増やす
もう一つ増えるものがあります。屋根の端部です。中庭を作ると、屋根に「内側の縁」ができます。
そこには谷樋、ドレン、防水の立ち上がり、入隅の役物が必要になります。
雨漏りは、屋根の真ん中からは起きません。
雨漏りはいつも「取り合い」から起きます。
材料と材料が出会う場所、方向が変わる場所、水が曲がる場所。中庭はその場所を一気に増やす手法なのです。
だから中庭の防水を「見えないところだから安く」で片付けるのは、後々の負担が大きくなるので避けてください。
ただ、ここは逆に言えばお金をかければ確実に効く場所でもあります。最優先で守っておきたい部分です。
水はどこへ逃げるのか<排水>勾配,ドレン,オーバーフロー
3:中庭は水の逃げ場を失う
ここが中庭の最大のデメリットです。普通の庭に降った雨は、地面に染み込むか、敷地の外へ流れていきます。
ただ、四方を建物で囲まれた中庭は違います。
水の逃げ道が「下の穴」しかないのです。
その穴が落ち葉や土で詰まると、中庭の水位はどんどん上がります。そして水がサッシの下端を越えた瞬間、室内に入ってきます。
中庭が浴槽になると考えると、少し怖くなりませんか。
住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)のバルコニーの解説には、次のように書かれています。
排水口は、原則として1つのバルコニーに複数箇所設ける。排水口を1箇所とする場合は、オーバーフロー管を設ける。
中庭もまったく同じ考え方でよいと考えています。
ドレンは2箇所以上。オーバーフローも別に取る。そして中庭の床とサッシの下端に、しっかり段差(立ち上がり)を取っておく。
この3点だけで、中庭の事故はほとんど防げます!
図面をもらったら、中庭のドレンが何箇所描いてあるか数えてください。1箇所しかなければ、その場で確認した方がいいです。
本当に明るいのか<採光,断熱>D/H,補正係数,外皮
4:中庭は近すぎると暗くなる
中庭を作る理由の一番は「光」だと思います。ただ、中庭に窓を向けたからといって、勝手に明るくなるわけではありません。
効いてくるのは中庭の幅と、囲む壁の高さの関係です。
これは感覚の話ではなく、法律の計算にそのまま出てきます。建築基準法施行令第20条に「採光補正係数」という計算があります。
住居系の用途地域だと、係数は採光関係比率×6−1.4(上限3.0)です。
採光関係比率は、ざっくり言えば窓から向かいの壁までの水平距離÷高さです。
中庭に面した窓の場合、この「向かいの壁」は自分の家の反対側の壁になります。
つまり中庭が狭くて壁が高いと、比率が小さくなります。
窓を大きくしても有効採光面積が0になることがある。
法律の上で「暗い部屋」になってしまうのです。住宅の居室は原則、床面積の1/7以上の有効採光面積が必要です。
もちろん緩和もあります。令和5年4月1日施行の改正で、床面において50ルクス以上の照度を確保できる照明設備を設けた場合は1/10まで緩和されました。
数値の一次情報は下記のとおりです。
ただ、これは「照明で補う」緩和です。照明をつけないと成立しない中庭では、何のために作ったのかという話になってしまいます。
中庭の幅は、囲む壁の高さとセットで決めてください。
5:中庭は熱を逃がす
先ほどの計算を思い出してください。外壁が40mから56mに増えました。
外壁が増えるということは、熱が出入りする面積が増えるということです。
同じ断熱の仕様でも、面積が増えれば逃げる熱の総量は増えます。ここは物理なのでごまかせません。
2025年4月から、原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務化されています。
あわせて木造2階建ての戸建住宅なども確認申請の審査対象が広がり、構造や省エネの図書を出すことになりました。
そのため、中庭のある計画は断熱やサッシのグレードで返す必要が出てきます。これもまた、コストの話に戻ってくるのです。
住んでからどうなるのか<暮らし>動線,音,手入れ
6:中庭は動線を伸ばす
中庭を真ん中に置くと、部屋から部屋へ移動する時に中庭を回り込むことになります。
四角い家なら真っすぐ行けたところを、コの字やロの字だと大回りします。
回り込む分だけ廊下が増えて、その分だけ居室が削られるのです。
とくに響くのが洗濯動線と、朝の身支度です。毎日20回、30回と通る動線が数歩伸びるのは、けっこう効きます。
ただ、これは「中庭を眺めながら歩ける廊下」とも言えます。ここは、廊下を「無駄」と考えるか「風景」と考えるかで評価がひっくり返る項目です。
7:中庭は音と視線を回す
中庭は光と風を回してくれます。それは前回書いた通りです。ただ、回るのは光と風だけではありません。
音と視線も同じように回ります。
中庭は硬い壁で囲まれた筒のようなものなので、声がよく反射します。リビングのテレビの音が、中庭をまわって寝室に届きます。
視線もそうです。中庭を挟むと、窓と窓が正面で向き合います。外からのプライバシーは完璧なのに、家族同士の視線が抜けてしまうのです。
せっかく空を切りぬいたのに、内側でカーテンを閉めることになります。
窓の位置をずらす、腰壁を上げる、スリットにする。この調整は設計の段階でやっておいてください。
番外:中庭は手入れを要求する
最後は番外編で、手入れの話です。中庭は光も風も雨も入るので、緑がよく育ちます。それは草もよく育つということです。
そして落ち葉はドレンに集まります。デメリット3に直結します。
私は草むしりが運動になるので好きなのですが、年に何回そこに立てるかは、正直に考えた方がいいと思います。
中庭がなぜいいのかという話は、下記の記事で紹介しています。
こういう検討をどの段階でやっているのかは、設計プロセスの記事で書いています。
まとめ
今回は中庭のある家のデメリットについて解説しました。
- 中庭は外壁を増やす
- 中庭は防水と樋を増やす
- 中庭は水の逃げ場を失う
- 中庭は近すぎると暗くなる
- 中庭は熱を逃がす
- 中庭は動線を伸ばす
- 中庭は音と視線を回す
- 番外編→中庭は手入れを要求する
中庭のデメリットを先に知っておくことが、中庭をやるかどうかの判断材料になるはずです。
ここまで書きましたが、私は今でも中庭は有効な手法だと考えています。
ただ、そう言えるのは水を片付けた中庭、お金を片付けた中庭、光を片付けた中庭だけです。
中庭は敵ではありません。
知らないまま進むことが敵なのです。
『敵を知り己を知れば百戦して殆うからず』
「孫子・謀攻編」に見える格言です。これを機に、中庭の見方を変えてみてください。
7つのデメリットを全部つぶした中庭は、本当に気持ちのいい家になります!
\n中庭のある家は、工務店やハウスメーカーによって得意不得意がはっきり分かれます。複数社の実例を並べて比べると、その差が見えてきます。注文住宅の資料をまとめて取り寄せる(持ち家計画)
今回の記事は以上です。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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